見出しへ

「長崎新聞」 1998年1月18日
公文書として保管せず 三方山流域の総水銀検出
昨年7−10月の臨時調査結果 長崎市幹部ら明かす

 長崎市の水質調査データ改ざん問題で、同市は十七日、基準値を超える総水銀を検出するなどした昨年七─十月の臨時調査結果を、公文書として保管していないことを明らかにした。

 昨年九月の臨時水質調査の事実確認を求める報道機関とのやりとりの中で、園田純一郎総務部長ら幹部が、公文書保管していない事実を明らかにした。
 同市は昨年十二月定例市議会に対し、臨時調査は十一月と十二月のみ行ったかのような報告をし、「水質に問題はない」としていたが、それ以前にも同調査を実施していたことが新たに発覚した。園田部長らは「この調査結果は市議会にも公表していない。公文書にもしていない」と語った。
 公文書として保管されていなければ、市民が情報公開請求しても開示されることはない。これについて、園田部長自身も「(公文書として保管されていないのは)問題だ」との認識を示した。

「NEWSあんぐる」 1998/1/18長崎新聞

事実確認さえ一時拒否 問われる隠匿体質
徹夜要請 やっと市長会見

 長崎市の水質データ改ざん問題に伴い、市民の水がめ・神浦ダム(西彼外海町)上流の三方山流域(同市松崎町)から、国の環境基準を超える総水銀が相次いで検出されている。その回数は、昨年7一11月の間に少なくとも計6回に上り、重金属による汚染が継続している可能性が浮上した。しかし、今回新たに市の調査で分かった総水銀検出について、市は一時、事実かどうかさえ答えることを拒否、市政記者クラブの16日から17日にかけての異例の徹夜要請に対しても口を閉ざした。真相・原因究明、今後の対応策も示されない中、同市の環境行政、隠匿体質があらためて厳しく問われている。(報道部・池本仁史)

 これまで三方山流域で明らかとなった環境基準(1g中0.0005r以下)を超える総水銀値は@市がデータを改ざんしていた昨年七月三日調査の0.0006rA市民団体が同十一月十八日に独自で調べた0.0006rB今回の同九月上旬市調査による0.0006rと0.0007r。このほか、九月の調査では上流二地点から基準とはけた違い(二倍超)の0.001r以上が検出された。
 飲料水を供給するダム上流域から立て続けに重金属の異常数値が出ていたわけだが、これらはすべてマスコミ報道や市民らの手によって明らかにされてきた。決して市が自主的に公表したのではない。
 こうした同市の隠匿体質もあって、市政記者クラブは新たな総水銀検出が発覚した十六日夜、緊急の記者会見を要請。午後八時五十分から始まった会見で、出席した担当課長らは「内部で原因究明や対応策を調査しており、市議会を通じて報告する」とした伊藤市長コメントを読み上げるにとどまった。同クラブは夜を徹して市長の会見出席を要求。だが、十七日午前五時ごろまで市側に応じる気配はなし。報道陣と関係職員が対じして徹夜するという状況下で、市側は「六時に市長と連絡を取らせてほしい」と、起床するまで待てという態度を取った。
 この間、事実確認にさえ応じない市側は「すべてがきちっとした時点で原因究明や対応策を公にする」(園田純一郎総務部長)という先送り姿勢に終始。「公人として二十四時間、連絡が取れる体制だ」(同)という市長の所在が数時間、不明となる失態も見せた。
 今回の一連の問題では、マスコミや市民による事実解明の一方で、データ改ざん否定など市側の事実隠しの実態が次々と暴き出されている。こうレだ隠匿体質は市政全般に通じることだ。「体質改善」を叫ぶ伊藤市長だが、この姿勢を改めない限り、市民の信頼回復はあり得ないことを、全職員に徹底すべきだろう。
 十七日午前十時から実現した市長会見。席上、前夜からかたくなに新たな総水銀検出の事実確認を拒否していた担当課長が、あっさりと事実を認めた。隣に市長がいた安心感からなのか。記者クラブ内ではこういう声まで聞かれた。「人聞としての主体性はあるのか」と。

見出しへ