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「長崎新聞」 1998年1月22日

公文書の決裁日も偽造
長崎市の水質データ改ざん つじつま合わせる

 長崎市の水質改ざんデータ問題で改ざんデータに添付する公文書の決裁日が偽造されていたことが二十一日、分かった。改ざんデータは同市議会総務委員会協議会に提出されたが、実際の決裁はそれ以後に行われ、同委員会は改ざんと”架空の公文書”提示という二重の虚偽報告を受けていた。
 日付が偽造されていたのは三方山及び神の浦ダム流域の水貧検査結果について」の伺書と報告書。
 改ざんが問題となった同市環境部、下水道部、水道局による昨年七月三日の水質検査の結果を、分析を担当した福祉保健部保健環境試験所が同八月十五日付で環境部環境業務簾に通知。これを受け、同課長は同十九日付で伺書を決裁、報告書を同部環境保全課などに提出したことになっていた。しかし実際は、総水銀値を改ざんした上で総務委協議会に提出した十月三十一日には決裁処理されておらず、市民による情報公開請求(十一月五日付)の動きを知ったため、日付を同試験所の通知直後の「八月十九日付」にして十一月四日ごろ決裁、同十日すぎに報告していた。市民には同十九日に公開していた。
 初村洋一郎環境業務課長は「(改ざんの事実を隠すため)つじつまを含わせようと日付を偽造した」と話している。

「NEWSあんぐる」 98/1/22長崎

情報非公開の信念 長崎市 データ公開再び拒否
市民、行政不信募らせる 「耐えるのみ」と職員

 長崎市の水質データ改ざん問題の発展に伴い、「真実のデータ」の公開を求める声が高まっている。だが、長崎市はそれを拒み続ける。「対応策まで含め明らかにする責務がある。個々のデータだけを出せない」というのが理由だ。市側の不手際で徹夜の活動まで強いられた同市政記者クラブの再三の要請に対し、市は二十一日、あらためてデータ公開を拒否した。この間、マスコミは真実を次々と暴いている。市民はそのたびに不信感を募らせる。今の長崎市政は「開かれた行政」と言えるのだろうか。
         (報道部・池本仁史)

 「記者クラブからの要請を拒否しているのではない。水質データを踏まえ原因究明や今後の対策まで含めて明らかにすることが責務と考える」
 水質調査結果の取材拒否を受け、同記者クラブは十九日、伊藤市長に抗議するとともに「環境基準を超える全データの公表」を要請した。それに対する回答はノー」だった。再回答を求めてもかたくなな姿勢をとった。
 データ改ざんが発覚した昨年十二月十六日以降、問題の三方山流域(松崎町)で、環境基準を超えた総水銀値がほかにも検出されていたことがマスコミや市民によって公にされている。知らせる義務があるはずの市は口を閉ざすのみだ。
 行政に対する市民の不信感は日に日に増幅している。環境部のある職員は「市民の風当たりはとても強い。でも今は耐えるのみ」と話す。市民からの苦情処理に出向いた職員が、歯を食いしばって役所に帰ってくることもあるという。それでも市は「対応策まで含めすべてがそろうまで」データを公開せず、「批判をあえて受けなければ仕方ない」と言う。
 その「すべてがそろう」時期を、市長は「今月中」と明言している。それまで「情報非公開」の信念を貫くらしい。市情報公開条例を、市自らが否定している異常事態である。
 二十二日、一連の問題に対応するため市議会は各派代表者会議と議会運営委員会を相次いで開く。厳しい追求があることは想像に難くない。市民の知る権利を支えに取材しているマスコミ、そして市民への「情報非公開」を貫く市であるから、市議会に対しても当然「すべてがそろうまで」との決意で臨むのであろう。

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