2001年1月 26日(金)「しんぶん赤旗」
真相をついた「赤旗」報道 「赤旗」の連載『日本の黒幕』が、金大中の殺害中止を龍金号に伝えた飛行機は、海上自衛隊機だったという証言を掲載した直後に「赤旗」特別取材班が私にとどけてくれた報告文書〈七七年十二月二十日付)が手もとに残っています。 防衛庁内大騒ぎ 「十二月一日、情報提供者と会った。掲載紙四号分を渡した。すると同氏は目を通す前に次のように語った。『防衛庁内は上を下への大騒ぎになっている。どのセクションからもれたのか。誰が『赤旗』にもらしたのかの大点検が進んでいる。貴紙の威力だな』」 「赤渡」報道が的を射抜いていなければ、防衛庁が大騒ぎするはずはありません。その後九九年に出版された韓国の「真相糾明を求める市民の会」編者の前掲『金大中拉致事件の真相』には、飛行機は自衛隊だったという最終結論がのっています。 第一に龍金号への連絡は「赤旗」報道のように無電連絡でした。金大中氏は、こう語っています。「推測ですが、飛行機から照明弾のような物を投げたと思うのです。ビカッと光ったのをみると。それで彼らが飛行機だといって出ていき、船がスピードを上げて逃げようとしたが、続いて″バン!バン!″と音がして、三〇〜四〇分そうしたあと正常速度で航行したのです。どこかと無電をやりとりしたに違いない。殺すな、もう殺さない、このように連絡がとれたので、飛行機は戻ったとみるべきでしょう。そのときはご存じのように、私の拉致事件を知ったハーバード大学のライシャワー、コーエン教授たちが立ち上がり、またキッシンジャーも動いたりして、アメリカ側は即刻日本と接触し総力をあげたのでしょう」(前掲『金大中拉致事件の真相』104ページ) 第二に、機種を当時のアナリカ韓国支部長ドナルド・グレッグ氏は以下に紹介するよぅに「探索航空機」だったと推定しいます。これも「赤旗」の報道の「沿岸警戒機」と合致しています。 「孫世一委員 金炯旭氏は『飛行機の標餓、すなわち日の丸の標識を見た』という目撃者の証言を伝えた。そしてその飛行機が船を尾行したというのだが」「グレッグ 興味深い話だ。もしそうだとすれば、その飛行機の正体は『探索航空機』(Search airplane)のようだ」(同292ページ)。 アメリカの要請 そして第二に、グレッグ氏はその後調査したのでしょう。金大中氏に飛行機は日本の自衛隊機だったと語りました。九二年十二月二日、ソウルでおこなわれた韓日共同シンポジウムで、ジャーナリスト李詳雨氏が発表した文章には次のように書かれています。 「アメリカは日本政府に緊急要請し、航空機の出動を要求した。アメリカは駐日米軍傘下の自らの航空機を保有していたが、事件が日本内で起こったことと、龍金号がまだ日本領海内を航行中であることを勘案して、日本側の航空機の出動を要望した。したがって金大中氏が海に投げ込まれる寸前に、龍金号の船上を警告飛行し、劇的に事態を反転させたその飛行機は、日本の自衛隊所属の航空機だった。このような事実は、この間『出動した飛行機は、アメリカ所属ではなく他の国のもの』と暖昧に語っていたグレッグ前CIA韓国支部長が、金大中氏自身に語ったことで明らかになっている」(前掲書342ページ) グレッグ氏からその事実を知らされた金大中氏は、九四年に「読売」紙土でのインタビューで次のように語っています。 「私はホテルから拉致された後、船で日本海に連れ去られ、海中に投げこまれようとしたが、その直前、日本の自衛隊機が上空に飛来、殺害しないよう警告したため命を取り留めた。この事実は、日本の国民はそろそろ知らされるべきである」(九四年二月十日付)。 日本の自衛隊機が「赤旗」が報道した証言のように、座間基地の海上自衛隊機だったかどうかは別としても、自衛隊機だった事実そのものは以上のようにほぼ確定されています。 金大中救出に動いたアメリカ側の行動はかなりくわしく前記の李詳雨氏の文章に書かれています。日本政府への要請から自衛隊機出動にいたる経路については、『日本の黒幕』での証言者は、次のようにKCIA―JCIAだったとしています。 「まず米政府が韓国の米大使館を動かして、KCIA本部に中止の要請をした。KCIA本部は殺害計画を中止、ら致計画だけの指令に変更。その指令がCIAと緊密な関係にあって座間基地に常駐する米陸軍第五〇〇情報部隊に伝えられたというわけだよ。座間基地には、米陸軍第五○〇情報部隊のもとで働いている自衛隊の陸幕二部別班と通信司令部があるんだ。 さて、殺害中止の指令は米五〇○部隊、二部別班をつうじて、ただちに厚本基地に駐とんする海上自衛隊の沿岸警戒機に伝えられ、出動が命ぜられた」(『影の軍隊』99ページ)。 秘密協定を結ぶ ところで去年五月二十一日、私は韓国テレビ局MBCから金大中事件で取材を受けました。終わってから取材スタッフがこう言いました。「アメリカのCIAも取材しました。金大中事件はわれわれに連絡なしに韓国のKCIAと日本のJCIAが勝手にやったものだ、と」 そうなるといつもは連絡があるのでしょう。日本の警察と韓国のKCIAの間には、協力の協定が結ばれているんです。前述の本では、「前駐米韓国大使館公報官長であった李在鉱は、韓国の前中央情報部長金炯旭から、一九六七年に韓国の中央情報部と日本の警察が、警察情報活動上の秘密協定を結んだ、ということを聞いたとする陳述をした」(40ページ)と書かれています。 この秘密協定もおそらくバックはアメリカのCIAでしょう。 アメリカのCIA、韓国のKCIA、日本のJCIAなど秘密謀略部隊の海を越えた関係は隠された部分はたくさんありますが、いまは情報公開の時代。金大中事件に日本自衛隊、とくに陸幕二部別班の行動は、救出に動いた自衛隊機の真相も合めて、政府は全容を日本国民の前に公表すべきです。金大中氏自身が「日本国民はそろそろ知らされるべきである」と言っているのですから。 (つづく)
(つづく)
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