ASEANは軍事同盟にならない
安全が心配というなら非核地帯化構想支持を
マレーシア・マハティール首相の演説から
マレーシアのマハティール首相は24日、同国の首都クアラルンプールで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議の開会にあたって演説し、平和と協力のASEANの考え方を強調するとともに、大国による安保、経済支配を批判しました。その部分の要旨を紹介します。
ASEANは結成時、経済の発展段階は低く、領土問題の緊張もあった。だが相互信頼にもとづく地域フォーラムとして発展してきた。当時北ベトナムが勝利すればドミノ現象がおきるといわれた。略奪常習犯のような隣国にたいしては、外国の保護が必要だといわれてきたし、いまもいわれている。
ベトナムは世界最強国に勝ったが、ドミノは倒れなかった。各国は繁栄し安定を示している。市場の力と国際貿易、外国投資を促進している。平和と善隣が信条となり、ともに協力して平和、自由、中立の非核地域を建設する願いをはっきりと示している。
問題解決の手段に武力を否定する
ASEANには平和と安全保障が必要だ。各国はそれぞれ余儀なく他国と相互安全保障の二国間取り決めを結んでいる。だがASEANは軍事同盟になってみずからを防衛することはしないと決心した。われわれの安全が心配だという国は、平和、自由、中立の非核地帯構想を支持すべきだ。われわれには敵はいないし、だれにたいしても仮想敵のレッテル張りはしない。域外の諸国との間に問題がおこれば、団結をテコにしながら協力して交渉による解決をめざしていく。
守ってやるという申し出はありかたいが、問題が起こった時に捨てられる国がたくさんあることをみれば、約束された支援がかならずくるとどうして確信できようか。
問題解決の手段としての武力を否定する。ASEANのやり方ですすんで問題解決にあたることによって安全を確保することが可能だ。決定的な防衛は安定と経済力であり、協力の意思であろう。だが肩を並べて戦うことは約束しないし、軍事ブロックにはならない。
自由市場システムによる経済成長が支配的な世界では、領土の獲得はもはや価値がない。そこで軍事的な征服や植民地は過去のものになったが、ほかの形態の覇権主義が可能であることを彼らは知っている。
経済発展、福祉に力を集中すべきだ
経済発展と国民福祉に力を集中すべきだ。経済的な繁栄こそ安保問題への回答である。繁栄すれば重視され考え方も尊重される。軍事力は恐怖を呼び起こし、高価な軍拡を導く。武器商人たちの利益になるだけだ。経済繁栄は尊敬を呼び起こし、利益はわれわれのものになる。
ボーダーレスの世界とか晴報化時代、市場と社会の開放がいわれている。国際通商政策についての新しい考え方がどのような影響を与えるか知らなければならない。発達した諸国が同じように市場を開放すれば結構だが、一方通行にならないだろうか。
いま通貨を不安定化させて ASEAN諸国の経済に打撃を与えようとする巧妙な策動がおこなわれている。基本的な経済は健全なのに、数十億ドルによってこれまでの発展が破壊されかねない。市場を開放して自由にせよというが、ならず者の投機家に開放しろというのか。懸念がある。彼らは強力な通商ブロックを形成し、最強の8ヶ国が自分たちだけですべての国の運命をきめるべきだとしている。その犠牲はわれわれが払わなければならない。
1997年7月28日(月)「しんぶん赤旗」