核兵器の恐ろしさを告発し怒りと悲しみ・平和への願いに満ちた
『長崎原爆資料館』
長崎市
私たちはこの日の出来事を決して忘れてはいけない
「あの日から50年が過ぎ、被爆者は年老い、被爆体験の風化が急速に進みつつあります。そして若い世代に戦争の悲惨さ、原爆の恐ろしさ、平和の大切さをいかに継承していくかが問われています。
私たち長崎市民は、このような悲惨な出来事が二度と地球上で繰り返されることのないよう心から願っています。また、この体験を風化させることなく後世に語り継いでいくことが私たちの責務であると考えています。
そして、平和を愛する世界中の人々と手を携え、世界恒久平和の実現に向けて努力していかねばならないと思います。」 被爆50周年のl995年に、原爆資料館の展示を中心に被爆の実相をより正確 に知ってもらうために発刊された「ながさき原爆の記録」に載せられている長崎市長の、言葉です。
被爆50周年を契磯にして新しく建て替えられ一九九六年にリニューアルオープンした資料館は、ビデオによる映像展示など最新の技術と展示方法を用いた近代的な資料館に生まれ変わりました。そして貴重な原爆資料を通じての平和希求の精神は旧国際文化会館からそのままひきつがれています。
核兵器の恐ろしさや私たちが何をなすべきかを教えてくれる
一九四五年八月九日、長崎の街が一発の原子爆弾で死の街になったという導入部からはじまる「ストーリー性のある展」を行っているというとおり、被爆の惨状をはじめ、原爆が投下されるに至った経過、被爆から現在までの長崎の復興の様子、核兵器開発の歴史、核兵器の廃絶・平和を求めてゆくという流れがよく分かるように展示されています。
ゆるやかなスロープのらせん通路で地下二階に下っていきます。
原爆投下前の長崎の街の風景が出迎えてくれる展示室に入ります。
薄暗い通路に十一時二分に時計の音が止まると同時に原爆の炸裂シーンが写し出されます。次のコーナーは、爆風でねじ曲がった貯水タンクや火の見やぐらなど被爆建築物の実物が並べられた原子野になった長崎の街、正面に実物大の浦上天主堂の壁が復元されています。映像モ二ターには黒焦げになった犠牲者の姿も映しだされています。
原爆投下までの経過が分かるコーナーから、熱線や爆風を受け、ぼろぼろになった国民服やまっ黒になった御飯がこびりついている弁当箱、溶けてくっついたビン、十ー時二分を指したままの時計などさまざまな被爆資料が並べられ、虚空をつかんで廃墟に横たわる黒こげの遺体、背中一面に火傷を負って苦しむ少年など被爆の惨状を物語るパネル写真や映像モニター、熱線や爆風、放射能による被爆のすさまじい恐ろしさを訴えるコーナーヘと続きます。
外国人九人を含む被爆者三十七人の証言が映し出されるビデオ。すべての展示物が圧倒的な迫力で核兵器の恐ろしさを教えてくれます。
すでに亡くなった人もいる被爆者の訴えが映し出されるモニターテレビの前で、修学旅行の中学生たちも身動きもせずに真剣に画面に見入っていました。
核兵器のない世界を目指して・・・のコーナーでは世界各国の核兵器開発や核実験の被害者の訴えもビデオで見ることができます。地下実験など年度ごとの実験の回数などもパネル展示がされています。
「ながさき」へ平和と自由の旅を
眼鏡橋や東山手洋館群、孔子廟、グラバー邸、浦上天主堂、出島、寺町などエキゾチックな見どころが多い長崎。この長崎原爆資料館を中心に平和祈念像の建つ平和公園、爆心地などの原爆遺跡や碑めぐりなどと合わせて、修学旅行の生徒たちをはじめ、たくさんの観光客が訪れています。
しかし、現在の長崎は最新鋭の戦闘艦や魚雷を作る軍需工場が、市の基幹産業となつているし「日米新安保体制」「新ガイドライン」の中では佐世保基地の強化、長崎港への米軍艦の入港もひんばんになっています。
原爆被爆対策部がある長崎市、組織的にはこの部に、長崎市平和推進室と長崎原爆資料館が所属し、社団法人の長崎平和推進協会とともに、長崎が世界平和実現の運動を推進することを誓った「長崎市民平和憲章」の理念達成のために努力を続けています。
長崎平和研究所編の「原爆遺跡と戦跡をめぐるガイドブックながさき」の前書きには「皆さんを歴史と現実を確かめながら、真にあるべき『ながさき』を知っていただく平和と自由の旅に案内したいと願っています。どうぞ長崎の土を踏み、原爆遺跡や碑を確かめ、被爆者たちの証言に耳を傾け、想像力を働かせ、あなた自身の新しい旅に出発して下さい」とあります。
新ガイドラインでさらに脅かされる平和、長崎への旅は、平和の大切さを改めて教えてくれる旅になるでしょう。
………… メ モ ……………
■長崎原爆資料館
●父通=市内電車赤迫行き(1・3番)で浜口町下車。市内観光には電車一日乗車券五〇〇円が便利。
●入館料二〇〇円。ガイドレシーバー一台一五〇円。
рO95・844・l231。
■観光の問い合わせ=長崎市観光案内所
рO95・823・3631。
月間「自治労連」1998年8月号