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ごみ焼却場から出るダイオキシンが大きな問題になっています。ごみの量を減らすとともに、燃やしたときに出るダイオキシンを外部に出さないしくみが求められており、そのための研究が進められています。
現在進められている研究のーつが排ガス中で放電することによってダイオキシンを分解する方法です。
通産省工業技術院資源環境技術総合研究所の荷福正治室長は、どのような放電条件が排ガス中の有害物質を分解するのに適切か、検討を進めています。これまでの研究で、電圧が数十キロボルト程度の放電(コロナ放電)を、有害物質に応じて毎秒20〜200回間欠的にくりかえせば、さまざまな化合物を効率よく分解できることがわかりました。
排ガス中の90%以上分解
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究グループは、こうした方法により、ごみ焼却場の排ガスをとりこんで放電をおこなえる実用規模の装置を試作。一日数百dのごみを焼却しているごみ焼却場に設置して、排ガスに含まれる有害物質の分解実験をおこないました。その結果、排ガス中のダイオキシンは九〇%以上分解し、なかには九九%分解した例もあったといいます。
今後、実際のごみ焼却場で使える装置の開発が民間の手で進められる見通しだといいます。
排ガス中で放電することにより、ダイオキシンの元になると考えられる物質も効率よく分解できることが確かめられています。荷福室長は、「この方法は、できたダイオキシンを分解するだけでなく、ダイオキシンができるのを防ぐこともできる」といいます。
さらに、窒素酸化物や硫黄酸化物も効率よく分解できます。ディーゼル排ガス中の環境汚染物質の抑制にも効果があるため、この方法はディーゼル排ガスの処理にも使える可能性があるといいます。
活性炭を使う方法に注目
排ガス中のダイオキシンを除去するのに、すぐ使える技術として、活性炭を使う方法が注目されています。排ガスを大気中に出す前に、活性炭をつめた塔のなかを通したり、排ガス中に活性炭を吹き込むやり方があります。有害物質を吸着した活性炭は、焼却炉に戻して燃やす循環方式です。
実用規模の運転で、厚生省が一月に発表した排ガス1立方b中に0.1ナノグラム(ダイオキシン中もっとも毒性の強い2、3、7、8四塩化ジベンゾパラジオキシン換算値、1ナノは10億分の1)以下のガイドラインを達成できることが確かめられているといいます。メーカーは、この装置を使えば、旧ガイドラインに沿った運転がおこなわれているものならば既存の焼却炉でも0.1ナノグラムの達成は可能だとしています。
生成の仕組み解明が必要
厚生省は九〇年に、ごみ焼却場から出るダイオキシン濃度を減らすためのガイドライン(旧ガイドライン)を示しました。ごみを完全燃焼させ、電気集じん機の温度を200度以下にすれば、排ガス中のダイオキシン濃度が、一立方b中○・五ナノc以下になることが期待できるというものでした。
しかし、厚生省が四月に発表した排ガス中のダイオキシン濃度調査の中間まとめによると、旧ガイドラインを満たした五十一のごみ焼却場のうち12施設は〇・五ナノc以下を達成していません。
ごみ焼却場でダイオキシンがつくられるメカニズムについて研究している通産省工業技術院資源環境技術総合研究所の今川隆主任研究官は、「ダイオキシンの発生を防ぐには、焼却炉のどこのどんな条件でどういう材料からダイオキシンができているかはっきりさせる必要がある。現在は基礎的な研究を進めている段階だが、ダイオキシンが生成しやすい反応経路とそれに関与する物質を明らかにしてごごみ焼却場から出るダイオキシンを減らすのに役立てたい」と話しています。
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