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新「ガイドライン」と自動参戦体制づくり
しんぶん赤旗・19970926〜

1、列島まるごと軍事基地に
 新「ガイドライン」(日米軍事協力の指針)は、「日本周辺事態」を名目に、アメリカが軍事介入をすれば、日本が軍事力・経済力を総動員する参戦体制づくりを打ち出しました。この日米安保の大改悪は、日本の進路と国民生活にどのような影響をもたらすのかー。
 民間空港封鎖武器積みおろし
 「ガイドラインで、日本の民間空港は、軍事基地に変身してしまうことになる」 民間航空会社の労組などでつくる航空労組連絡会(航空連)の役員は、こう語ります。
 新「ガイドライン」は、「周辺事態」での米軍への協力として「民間が有する能力」の活用を明記し、「民間空港・滞湾の使用」を盛りこみました。
 大阪空港で荷物の積み込み作業をしていた労働者(39)は「私たちは、軍事物資をどう取り扱うかの訓練を受けていない。物資の中身も、軍事機密で確認することもできないだろう。こうした物資の積みおろしは、安全面からも非常に危険で、考えられないことだ」と不安をもらします。
 航空連の役員は「最悪の場合には、すべての航空施設が米軍におさえられ、封鎖されてしまう。空港の労働者は、武器・弾薬など軍事物資の積みおろしや修理、給油などに総動員される。空港が一時的に封鎖される場合でも、国民生活への影響ははかり知れない」といいます。
 有事(戦時)立法で民間を強制動員
 今月、空母インディペンデンスの北海道・小樽寄港をはじめ、米軍艦船が、相次いで日本の港に寄港しました。その際、艦船の接岸、物資の積みおろし、食料や水、燃料の補給、し尿・ごみ処理、米兵の輸送などに、港湾労働者や民間業者が動員されました。
 新「ガイドライン」は、「周辺事態」の際の米軍協力として、米軍艦船の出入港支援、空港や港湾での物資の保管施設の確保、物資・燃料の提供、輸送のための車両やクレーンの使用、鑑船・航空機の修理・整備などを列挙しています。
 新「ガイドライン」によって、こうした作業への民間動員は大規模にすすめられ、有事(戦時)立法などで強制的におこなわれるようになります。
 空母コンステレーションが寄港した佐世保港(長崎)では、米軍輸送のための旅客フェリーの使用を断ったフェリー会社の関係者から「法律で強制されたら、大きな損失につながりかねない」との声があがるなど、不安が広がっています。
 傷病兵の治療で医療関係者も動員
 新「ガイドライン」は、日本国内での傷病者の治療や、医薬品・衛生器具の提供など、医療関係者の動員も明記しました。
 民間や国公立の病院などの労組でつくる「日本医療労働組合連合会」(医労連)は、「平和のための処方箋(しょほうせん)」というパンフレットを発行し、新「ガイドライン」反対を訴えています。医療労働者には、第二次世界大戦中、医師や看護婦が強制動員された苦い経験があります。
 医労連の木口栄調査政策局書記はいいます。
 「国内での治療というが、治療を受けた兵士はふたたび、前線にかえっていく。医療関係者が戦争のシステムに組み込まれ、加担させられることになる。傷病兵の治療は、より戦地に近いところでおこなうことが必要で、今後、医師や看護婦が戦地に派潰されるという事態にエスカレートしていく危険もある」
2、米国の無法な干渉に加担
 「世界中どこでも即応態勢」
 新「ガイドライン」決定の前日(二十一日)、神奈川の米軍横須賀基地に、第三艦隊旗艦コロナドが入港しました。記者会見したナター第七艦隊司令官は、米海軍の即応態勢について、つぎのように語りました。
 「いまや米海軍は、世界中どこのどういう事態でも、艦隊の責任範囲に関係なく、出撃できる即応態勢をとるという概念をとりいれている」
 コロナドは、「世界的規模の即応態勢を誇示するように、「リング・オブ・ファイヤー」(砲火の輪)とよばれる衛星回線を使った通信・指揮統制システムの実験をおこないました。世界中をカバーする衛星回線を使ってシ「打撃システムをもっと効率的に使うための試験」(在日米海軍司令部報道部)でした。
 九月、日本に米空母三隻が同時寄港する異常事態がすすみました。佐世保に寄港したコンステレーションは中東作戦の帰り、横須賀に寄港したニミッツは中東作戦に向かう途中でした。米軍が日本を、「世界的な即応態勢の足場にして、地球的規模で出撃する態勢をいっそう強めています。
 「北のヤリ」から世界の紛争へ照準
 かつて旧ソ運に対抗する「北のヤリ」と称された青森・三沢基地のF16戦闘機部隊も、世界の紛争地へ介入する”殴り込み部隊”に変ぼうしています。
 三沢基地の第三五戦闘航空団の司令官が「ソ連の脅威が消滅したため、われわれは、東南アジアや他の諸地域に焦点をあてている」と明言したのは、九四年十一月でした。
 今年七月、「航空遠征軍」が太平洋地域で初結成された際、三沢基地のF16戦闘機部隊が「指揮官を出すとともに、必要とされる基地運営支援要員や装備の配置に責任を負う」(在日米軍司令部)中心的役割を果たしました。「航空遠征軍」とは、紛争地域に七十二時間以内に急派する緊急即応部隊で、97年米国防報告によると、「地球的規模の能力の重要な構成要素につくりあげ、広範に使用できるよう、われわれの作戦、兵たんシステムを適合させる」と位置づけられています。
 空母戦闘群と海兵隊というニつの”殴り込み部隊”に加え、”空の殴り込み部隊”まで日本を出撃拠点とする危険性があります。
 「米国の国益」のためには無法も
 新「ガイドライン」決定の際の共同発表では、日米軍事間盟を「この地域における米国の肯定的関与を促進するもの」などと位置づけています。これまで、米国はみずからの「国益」のためには、国際法にも反する違法な軍事介入を強行してきました。いまでもベトナム戦争を「正義の戦争」と公言し、国連総会で非難されたグレナダ、パナマ侵略を「民主主義を増進させるため」の作戦の典型例にあげています。
 昨年九月の米国のイラク攻撃でも、三沢基地のF16部隊が参加したほか、横須賀を母港とする駆逐艦ヒューイットも巡航ミサイルを発射、嘉手納基地の空中給油機KC135がB52爆撃機に空中給油しました。
 国際的に強く批判された軍事干渉に在日米軍基地が自由使用されたにもかかわらず、日本は攻撃前日に「事前通報」を受けただけでした。
 新「ガイドライン」では、米軍の「アジア太平洋地域における前方展開兵力の保持がうたわれ、「地域的および地球的規模の諸活動を促進するための日米協力」を明記しています。米軍が軍事介入した場合、日本も加担し、国際秩序の侵犯者になる危険が大きくなっています。
3、海外の日米共同作戦に拍車
 「これは終わりではなく、始まりだ」
 橋本首相は二十四日、新「ガイドライン」の決定について、こうのべました。
 日米共同演習積み重ねて
 日米両政府は、「周辺事態」の際の[相互協力計画」について「検討の基礎的作業を速やかに終了する必要がある」(日米安保協議委員命共同発表)とし、十一月中にも大節合意をめざすなど、海外での”戦争計画”づくりを急ごうとしています。
 これまでも米軍と自衛隊による日米共同作戦態勢づくりは、旧「ガイドライン」(一九七八年)以来、「日本有事」、「極東有事」、「シーレーン防衛」、「波及型有事」、「相互運用性」などの研究や共同演習などによって積み重ねられてきました。
 旧「ガイドライン」以前は、掃海訓練など年数回程度しか実施されていなかった米軍と自衛隊の共同演習は、質、量ともに拡大し、陸海空三軍統合演習など、きわめて実戦的、総合的なものになりました。
 七八年度で六回のべ三十日だった日米共同演習は、九六年度で二十一回のべ百五十八日に。規模も、七八年度の艦艇三十九隻、航空機百七十一機が、九六年度は艦艇百三十七隻、航空機千四百十七機、人員二万七千百五十四人に膨れ上がりました。
 九二年以降、日米両軍が一体になって、交互に前方やや後方に進出する「超越交代」が常態化。「指揮・統制から日本の基地での作業にいたるまで、あらゆることが統合」(九四年十一月、米第三五戦闘航空団計画主任)されています。
 九六年に締結された「日米物品役務相互提供協定」(ACSA)によって自衛隊は、給油、輸送、部品提供、医療、宿泊など、米軍へのあらゆる兵たん支援実施するようになりました。
 しかも、共同演習は、ソ連解体後の米戦略の転換にともなって、地域紛争を想定したものに変化しています。
 九四年の環太平洋合同演習(リムパツク)では、海上封鎖訓練を実施。「湾岸戦争のような紛争で、よりスムーズな共同作戦ができる」(米第三鑑隊司令官)と”評価”されました。九五年十一月の、米空母も参加した共同演習では、停船命令、警告射撃など「臨検」を含む海上阻止訓練も実施しました。
 これらは、新「ガイドライン」で「周辺事態」の際の自衛隊の役割とされるものです。
 「交戦規則」作成も盛り込む
 新「ガイドライン」は、日米共同作戦のための「共通の基準及び実施要領」を確立することを明記し、「交戦規則」(ルール・オブ・エンゲージメント)の作成まで盛り込んでいます。
 「交戦規則」は、戦闘の指揮・命令系統や部隊の行動基準を定めたものです。憲法が交戦権を否認しているため、自衛隊創設時に検討されたものの策定できませんでした。
 そのうえ、”統合司令部”ともいうべき「日米共同調整所」を常設。防衛庁筋は、「防衛庁の中央指揮所も候補だ」などとのべています。
 「日本防衛」を建前にしていた日米軍事同盟を、アジア太平洋地域での軍事干渉のための同盟に衣替えさせる新「ガイドライン」のもとで、日米共同作戦態勢づくりに拍車がかけられようとしています。
 しかもそれは、自衛隊だけでなく、地方公共団体や民間の「能力を活用し、国民を総動員する”戦争針画”づくりです。
4、引き受けるのは戦争行為
 「これまで日米間で防衛・軍事問題について積み重ねてきたが、それらは単に政治的な問題だった。実際、戦争になったら日米安保はうまくいくのか。日本の側からも提起され、新ガイドラインをつくった」
 新「ガイドライン」が発表された直後の二十六日、来日したリチャード・アーミテージ元国防次官補はこうのべました。
 新「ガイドライン」について自民党・加藤幹事長は「憲法の枠内でおこなわれる内容で、周辺事態の拡大防止措置も整備されている」(二十四日)とのべるなど、危険性を覆いかくそうとつとめています。
 しかし、新「ガイドライン」で日本が引き受けるのは機雷掃海、米軍への物資の補給など戦争行為そのものです。
 自衛隊参加は武力行使前提に
 ○情報交換・・来年度から日本に導入されるAWACS(空中警戒管制機)は、東京上空から岡山までの範囲で約六百個の目標を識別し、交信内容、地上の小部隊の動きまで分かる機能を備えています。
 しかも自衛隊機は「データリングシステム」で米軍に軍事情報が瞬時に提供される仕組みです。「米軍の攻撃目標の提供もおこなうのか」との、日本共産党の松本善明議員の質問に、久間防衛庁長官は「(米軍と自衛隊の情報システムは)自動的につながっているので、ある時点でとめる、とめないはなかなか難しい問題」(六月十一日、衆院外務委)と答弁。「相手国から攻撃される危険はある」(同前)とのべました。
 ○「臨検」も戦争行為そのものです。湾岸戦争で、アメリカの臨検部隊はペルシャ湾内を航行した約七千六百隻のうち九百六十四隻を検査。米軍の停止命令に従わない艦船十一隻には威嚇射撃をおこない、さらに他の十一隻にはヘリコプターを使って強制乗船しています。
 元米海軍大将のマクデビッド氏は「自衛隊が臨検に参加するなら、武力行使が前提となる」(二十四日、NHK)と語っています。
 ○機雷掃海・・新「ガイドライン」で日本がすることは、湾岸戦争後おこなわれた掃海作業とは、まったく異なるものです。
 海外で軍事作戦に入っている米軍の攻撃に備え、相手国が敷設した機雷を自衛隊の掃海艇が除去することです。
 米軍が太平洋に配備している掃海艇はわずか二隻。一方、自衛隊は三十五隻を保有しています。キャンベル国防副次官補は「自衛隊の機雷掃海は、日本の憲法上の問題にかかわるが、がイドラインがこのような任務を可能にすることを希望している」とのべています。
 従来、政府は機雷除去について、「外国により武力取撃の一環として敷設されている機雷の除去は、その外国にたいする武力の行使にあたることになる」(内閣法制局)と認めているように、武力行使にあたる作業をすることになるのです。
 戦闘行動地域との線引きは不可能
 新「ガイドライン」では 「戦闘行動がおこなわれている地域とは一線を画された地域」などとしています。しかし、”線引き”をめぐって政府は、国会で「通常起こらないことが起こりえないような地域をなんとか探したい」(秋山防衛局長=当時)と、議場から苦笑が漏れるような答弁をするありさまでした。
 久間防衛庁長官は「(線引きは)現場指揮官が判断しなければならないケースが出てくる」(六月二十九日、NHK)とのべています。
5、米国への”白紙委任状”
 「(新『ガイドライン』で)大切なのは、周辺有事の際に日本がただちに作戦計画にもとづいて行動し、米軍に協力できる仕組みができたことだ」
 米国防総省関係者は、新「ガイドライン」について、米軍がアジア太平洋地域で軍事介入すれば、日本が自動参戦する仕組み」がつくられたことを強調しました。
 武力行使の決定 米国がおこなう
 新「ガイドライン」は、「周辺事態が予想される場合には、日米両国政府は、その事態について共通の認識に到達するための努力を含め、情報交換及び政策協議を強化する」とうたっています。
 しかし、「アメリカが武力行使する場合、その判断は、基本的にはアメリカ自身がおこなう」」(六月十日、衆院安保委、折田外務省北米局長=当時)ことは、政府が認めています。日本は、その武力行使について「情報交換や政策協議の過程において、米側から敵時敵切な説明がなされる」だけで、主権国家として是非を判断する仕組みにはなっていません。
 評論家の加藤周一氏は 「主としてアジアに米国が介入する際、何を有事として、いつ、どういう規模で軍事行動するかは米国が決める。それに自動的に協力するという、いわば白紙委任状だ。そうは書いてないがそう使える」(「朝日」九月二十六日付)と指摘しています。
 政府はこれまで、ベトナム侵略戦争やグレナダ、パナマ侵略、最近では昨年九月の対イラク攻撃など、アメリカの無法な軍事介入について、国際社会が強く非難した場合でも、ほとんど無条件的に支持してきました。
 橋本首相はいまでも、ベトナム侵賂戦争を「自由主義陣営の支援のために介入した」(九六年四月二十三日、衆院本会議)と美化・擁護しています。
 実際に、米軍が日本を足場に世界に自由出撃し、無法な武力攻撃を実施しても、容認してきました。米軍部隊の配置や装備の変更、日本からの戦闘行動などについておこなうことになっている「事前協議」は、三十七年間、一度も発動されたことがありません。
 防衛庁筋は、「事前協議」について「そういう事態があれば、別途やるが、『周辺事態』については、情報交換を強化する」とのべ、事実上、想定していないことを認めています。
 自治体や民間も 動員し米軍支援
キャンベル米国防副次官補は、新「ガイドライン」について「九〇%は対米支援」とのべていますが、米軍が軍事行動に突人した際に、日本がどのように協力するかは、きわめて総合的かつ具体的に取り決められています。
 「周辺事態」の際の「相互協カ計画などを作成する組織として「包括的なメカニズム」をつくり、日米の「活動に関する調整」をする「調整メカニズム」を 「平素から」確立することを盛り込んでいます。
 「包括的メカニズム」には、すべての政府関係機関が組み込まれています。そして、「相互協力計画」の実行にあたり、日米が共通の即応準備態勢をとるための「共通の基準」や、米軍と自衛隊との部隊行勤にかんする「共通の実施要領」(交戦規則)まで作成します。
 「調整メカニズム」は、日米両国の関係機関でつくる”総司令部”ともいうへきものです。「周辺事態が予想される」段階から「運用」され、自治体や民間機関も動員されます。
 米軍が軍事作戦行動を開始すれば、自衛隊のみならず、政府機関や地方自治体、民間の機関など国をあげて、米軍の支援に動きだす「仕組み」が「平素から」つくられようとしているのです。
 米政府高官は二十四日、新「ガイドライン」の背景説明で、「これらのメカニズムは、(新)ガイドライン承認後、ただちに構築される。それは数カ月である」とし、倦iはi務レ『ベルの会合になる」とのべています。
6、加速する有事立法の動き
 橋本首相は、九月二十九日、新「ガイドライン」策定後初の臨時国会で、「新たな指針の実効性を確保する作業を急ぎ、法的側面を含めて必要な措置を講じていく」とのべました。
 同日の臨時閣議では、海外での「有事」のさいの日米「相互協力計画」や有事立法制定に向け、「関係省庁連絡調整会議」を設置することを決定。来年早々にも有事立法の骨格を固め、通常国会に提出しようとしています。
 米軍や自衛隊の 軍事行動を最優先
 米側も、「向こう六〜八カ月の法製備に向けた計画を日本側から聞きたい」(キャンベル米国防副次官補)と有事立法推進を要求しています。
 政府・自民党は、有事立法という「おどろおどろしい言葉」(加藤自民党幹事長)を避けて、「法的整備」などとのべていますが、その内容は、米軍や自衛隊の軍事行動を優先的に保障するとともに、国民を強制的に動員することなどを目的にした戦時立法そのものです。
 すでに自民党の安保調査会や国防部会は、政府にたいし、日本を足場にした米軍の軍事作戦を全面支援するための措置を列挙した 「提言」をおこなっています。
 そこでは、日本の空域で「米軍機専用の回廊をつくることや、「作戦機・鑑船の増大に伴う米軍の優先交通権に関する措置」などを明記。九四年の北朝鮮「制裁」の際に、米国が日本に要求してきた具体的内容を盛りこんでいます。
 燃料補給や武器部品の提供など、米軍への兵たん支援を可能とする「物品役務相互提供協定」(ACSA)を、共同演習やPKOの際だけでなく、「周辺有事」においても適用する」ことを提起。自衛隊が、機雷除去や「臨検」などの戦争行為を実行するための「立法措置」も検討されています。
 外務省OBは、「自衛隊法の『改正』は一項目やニ項目ではすまないし、政府は個々の法律では間に合わないと、緊急事態法などの新法も考えている」と語ります。
 基本的人権、地方自治ふみにじる
 新「ガイドライン」では、補給・輸送・医療・通信など四十項目もの対米協力を義務づけ、地方公共団体や民間の「能力を敵切に活用する」ことを明記しています。
 政府関係者は「有事立法には、自衛隊の活動範囲を広げるためのもの、米軍の後方支援をするためのもの、国民の私権を制限するものがある」などとのべ、国民の基本的人権まで制限する意図を隠しません。
 七七年以来、政府が「日本有事」を口実としてすすめてきた「有事法制研究」では、すでに物資や土地・施設のとりあげ(徴発)、医療・運輸・港湾など十業種におよぶ強制動員(徴用)を実施する内容がまとめられています。新「ガイドライン」にともなう「有事立法」は、これらをさらに拡大し、アメリカがひきおこす戦争に自衛隊を動員するとともに自治体、民間ぐるみの戦争協力を強要しようとしているのです。
 国民が協力を拒否すれば、「強制措置(罰則等)に係る立法措置」(自民党国防部会)まで検討しています。
 新「ガイドライン」のもとで、憲法の平和原則はもちろん、基本的人権や地方自冶をファッショ的にふみにじる戦時体制づくりがすすめられようとしています。
 しかし、こうした戦時体制づくりに反対する声は急速に広がっており、自治体首長が「市立総合病院で、市民をわきに追いやって、米軍の優先受け入れはやらない」(佐世保市)と議会で答弁したり、空港の米軍使用に反対する請願書が全会一致で採択れる(大村市)などの状況もうまれています。
7、アジアに広がる警戒、批判
 「今回のガイドラインは、緊急事態が起こったら、アメリカと日本が協力して日本周辺の国に干渉するという内容です。日本の侵略や植民地支配の被害を受けた国は、日本の軍事大国化に懸念と不安を強めています」
 韓国の新聞・朝鮮日報の東京特派員イ・ジュンさんは、新「ガイドライン」についてこう語ります。
 「日米安保支持の  国も不信もった」
 同じ韓国の新聞・東亜日報も、九月二十四日付から三回にわたって「東北アジアの軍事地図が変わる」と題した大型連載を掲載。新「ガイドライン」が「日本周辺の有事にも、自衛隊が関与できる道を開いた」と警告しています。
 韓国だけではありません。タイの英字紙ネーションは、「ガイドライン」見直しについて「従来の日米安保支持者である国々は不安を抱いた」と指摘。新「ガイドライン」についても[ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国は、仮にそれが日米安保の傘下であっても、日本の安保上の役割が拡大することに不信をもった」(九月二十四日付)と報じました。アジア太平洋諸国から、新「ガイドライン」による日本の軍事的役割の強化を新たな脅威としてきびしい警戒と批判の声がわきおこっています。
 中国の銭其煌O相は「日米安保条約の対象を拡大するものなら周辺諸国の懸念を引き起こす。隠そうとすればするほど馬脚があらわれる」という見解を表明。「非核フィリピン連合」は、「国際問題における日本の役割を軍事化する」ものとし、「かつてない警戒を払うべき」との声明を発表しました。
 侵略戦争への 無反省と重なる
 アジア各国の新聞は、日本政府が侵略戦争と植民地支配への無反省をつづけ、居直り的な美化さえおこなってきたことを新「ガイドライン」と一体の問題としてとりあげています。
 東亜日報は、「周辺諸国が、過去の日本軍国主義の悪夢の再現を憂慮して警戒することは当然だ」(九月二十五日付社説)と主張。シンガポールの有力紙ストレーツ・タイムズ(九月二十六日付社説)は、「多くのアジアの国々は、日本の海外での軍事活動のもつ意味や平和憲法とどう適合するのか、ということに懸念を抱いている。このことは、第二次世界大戦で日本の侵略と占頷を経験したアジアの歴史を考えれば、理解できることだ」とのべています。
 前出のイ・ジュンさんは、こうしたアジア諸国の懸念には「三つの理由がある」といいます。
 「一つは、アジアの安全保障環境や安保政策に重大な影響を与える問題が日米両国政府だけで決められたという原則的問題。二つ目は、日本が過去の侵略戦争や植民地支配を反省してくり返さないという行動をとってこなかったことからくる軍事大国化への懸念。三つ目は、「周辺事態」など、軍事や安保問題の専門家からみても、内容的にあいまいなところが多いということです」
 平和と安定への 第一の脅威に
 米国の日本政策研究所所長のチャルマス・ジョンソン氏は、「日米ガイドラインが明らかにしたものは、今日、東アジアの安定と平和にたいする第一の脅威が、日米両政府がこの地域で好戦的で時代錯誤の軍事態勢をとっていることから生じているという事実である」と語っています。
 「アジアに最大の脅威をもたらす安保大改悪のくわだてに反対するたたかいを発展させる」(日本共産党第二十一回大会決議)ことがますます重要になっています。

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