政府が沖縄・名護市のキャンプ・シュワプ沖に建設をねらっている海上基地について、沖縄にも駐留した経験を持つ元米海兵隊将校の口パート・ハミルトン氏は建設に反対し、海兵隊は本国へ撤退すべきだと訴えてきました。21日の市民投票を前に、名護市民へのメッセージを語ってもらいました。
海上基地建設は絶対にやめるべきです。名護の人たちに、これだけは知ってほしいことを話しましょう。
第一に、日本政府は、海上基地は住宅地からはなれているので騒音の被害は少なくなるといいますが、実際は普天間基地以上の騒音に苦しむことです。
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海兵隊のヘリ部隊は兵士を乗せて陸上部を飛行し、そして戦場で兵士がヘリから降り立ち、銃を持って攻撃をしかけるのが任務です。つまり、名護の市街地をふくめ、陸上部で訓練をしないと、実戦的な意味は何もないのです。
しかも米国は普天間基地所属のCH46に代えて最新鋭の垂直離着陸機・V22オスフレイの配備を計画しています。私もV22の開発にかかわっていましたが、V22はCH46より大きな積載能力を持ち、その分騒音もはるかに大きい。
第二に、日本政府は「海上ヘリポートは普天聞より小さくなる」と宣伝していますが、実際は塩害からヘリコプターを守るための格納庫、航空燃料の貯蔵庫、弾薬庫、医療施設、消火、救難活動のスペース、兵舎など数多くの施設が必要です。挙げたらきりがありません。これだけのものを海上基地だけにおくことは不可能です。キャンプ・シュワブ自体、拡大せざるをえないでしょう。
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第三に、普天間基地をキャンプ・シユワブ沖に移す意味は何もないどころか、海兵隊の沖縄駐留すら、もはや意味はないということです。
海兵隊は本国に帰り、カリフォルニアあたりに駐留すべきです。若い兵士は家族や友人のそばで生活できるし、広い場所で十分な訓練ができる。せまい海上基地に二千五百人もつめこまれる生活は、私なら絶対したくありません。
九〇年代に入り、世界情勢は劇的に変化しました。国際関係における軍事の比重は小さくなり、経済・文化など多面的な関係が求められています。東アジアでも、米国を中心とした関係でなく、相互の友好関係をつくる時代に入っています。少しずつ、米国は東アジアから手をひいていくべき時代なのです。
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第四に、今度の日曜日の市民投票の持つ意味です。
アメリカで軍事基地を建設する場合、政府は住民への説明を義務づけられています。それが不十分なら、住民はさらに詳しい情報の提供を請求できます。報告書の内容を不服として科学者が訴訟を起こすことも可能です。
しかし日本の政府は、海上ヘリポートについての必要な情報をひた隠しにし、住民を無知にする一方で経済振興策を持ち出し、その場しのぎを図っています。
新「ガイドラィン」(日米軍事協力の指針もそうですが、日本は一部の官僚たちだけの協議で、時代の流れに逆行した軍事路線の強化を図っています。まるで、少数の人間が国の運命を決め、後に大さな悲劇を迎えた一九三〇年代の状況によく似ています。
名護の市民投票は、数少ないチャンスです。今度の日曜日、東京とワシントンに一つのメッセージが届けられるでしょう。少数の官僚ではなく、多数の民衆こそが未来を決めるのだと。
私は八二年から八八年、現役の海兵隊一員として働き、二年間を沖縄ですごしました。沖縄の人々はやさしく、友好的で、私の人生でもっともすばらしい日々でした。私の発言が、沖縄の人々の助けになることを願っています。
政府が海上基地建設をねらう冲縄・名護市のキャンプ・シユワプ沖。サンゴのリーフか広がっています。