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1997/6/27 しんぶん赤旗

元衆議院議長

田村元さん

議論なき国会  この政治のあり様が怖い

 いまの政治をながめていると政治家も政党も、もっとまじめにやってほしい、といわざるをえない。
 まじめに、ということばにぼくが込めている意味は、政治にたいするこころがけ、自分本位でなく国民本位に政治をやってくれ、というしごく当たり前のことなんです。
 自民党は、五五年体制下で自民党にあらずんば政党にあらずという奢(おご)りがでて政官財癒着、権力主義が横行し、そして腐敗墜落の道へおちいった。その基礎は派閥政治の跳梁祓嗅(ちょうりょうばっこ)で、派閥領袖は無理な政治献金集めをした。政治のあるべき姿から言えば巨悪といってよかった。
 いま自民党の一番悪い面の派閥政治が再び鎌(かま)首をもたげはじめている。
 保・保連合というのは全盛をきわめた当時の自民党よりもでかい保守政党をつくろうということです。とくに憲法改正とか防衛問題(日米安保体制の強化)を中心テ‐マに保・保連合ができるとしたら、これはひじょうに憂うべきことです。一党独裁的な政治はとるべきでない。
  ほかの政党へ限を向ければおよそ政党の体をなしていない。新進党は最たるものでしょう。何をいっているんだか政界に通じる私でもさっぱりわからない。しかもボロボロ(離党者が出て)欠けていく。まず自分の政党をまとめなきゃいけないのが、この政党の現状です。
 民主党は、すっきりした主義・主張と政策が見られません。政策よりも「管さま、鳴山さま」と、その人気にあやかりたい選挙対策のためだけの政党のような感じがしてならないです,僕の目には民主党の多くの議員がオポチュニスト(日和見主義者)に見えるんです。
 先だって閉会した通常国会で野中広務くん(自民党幹事す長代運)が米軍用地特措法を通本会議で大政翼賛会的にならないよう、と議会政治のあり方に警鐘をならしましたね。大政翼賛会というのは本来の意味とちょっと違うように思うが、いわんとする気持ちはよくわかる。
 戦前の大政翼賛会は軍の力と恫喝(どうかつ)で政治家が一つにまとめられた。予算委員会で気に入らない質問をすると軍人がカチャリと軍刀を鳴らして「黙れ!」。これに抵抗した尾崎行雄などは牢屋へ放り込まれなそのときすでに共産党は弾庄されていたが……。
 軍部の恫喝のない今日の時代に、特措法は、何とはなしに節のない竹のような形で九割の賛成で通ってしまった。泥棒をなくせというような法案だったら全会一致もありうる。
 しかし特措法は日本の主権にかかわる重い法案です。それをろくすっぽ議論しないで通してしまった。審議とは、つまびらかに事の可否を論議検討すること、という意昧なんです。議論なき国会というのは国民をないがしろにすることです。この政治のあり様がこわい。
 ぼくは現役の代議士時代には日本共産党に偏見がありました。引退した今日、ひとりの国民として素直に客観的に見られる感じになった。その目でみる日本共産党という存在は、野党らしい真の野党という点で、日本の混迷する議会の中にある一服の清涼剤(気持ちをさわやかにさせることがらのたとえ= 「広辞苑」)のように思えるのです。今後とも際立った発言をしてもらいたいものだと思っています。
 ぼくは日本共産党にたいして、今までこんな表現で語ったことはないが、与党か野党かわけがわからない政党や党内の喧嘩(けんか)で右往左往している政党ばかりで、共産党以外の政党はすべて、これ保守。この政治の現状を目の当たりにすれば、私の表現は許されるのじゃないでしょうか。

1997/6/27 朝日

田村元衆院議長

「赤旗」1面登場「共産は真の野党」

「清涼剤」とエール

 二十五日付の共産党機関紙「赤旗」1面の連載インタビューに、昨年政界を引退した自民党の田村元・元衆院議長が登場し、「野党らしい真の野党」と共衆党をほめあげた。
 「このままでいいか日本の政治」と題する欄で、田村氏は、政界の現状を「与党か野党かわけがわからない政党や、党内のけんかで右往左往している政党ばかり」と憂い、共産党について「一服の清涼剤のように思える。今後とも際立った発言をしてもらいたい」とエールを送っている。
 この連載には田村氏のほか、23日死去した瀬戸山三男・元文相(自民党)、竹本孫一・元民社党政審会長も登場した。自民党の強固な支持基盤だった各県の医師会の会長も次々に出て、医療保険制度改革をめぐる共産党の主張に賛意を表明している。
 赤旗編集局によると、人選は、その人の投書や日ごろの発言を見て判断しているという。「共産党への理解以前に、『いまの政治があまりにひどいから』と、インタビューに協力してくれるケースが増えている」と山根隆志赤旗政治局長。
 共産党支持の広がりのあかし、とは言えなくとも、同党と保守層の間の垣根が低くなっていることだけは確かなようだ。   
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