to forum BACK NEXT

1997年1月までの新聞記事





96/12/20(毎日) 原爆落下中心碑撤去反対の署名 長崎市が電算化し分析 条例で禁止 市長「部下がした」

長崎市が、市の原爆落下中心碑撤去計画に反対して提出された署名簿をコンピューターに入力、住所や 世帯別に分類、分析したことが19日分かった。思想信条にかかわる個人情報の電算化は、他目的への 流用や外部流出の恐れがあり、市は条例で禁止している。伊藤一長市長は「部下がしたことで私は知ら ない」と話しているが、複数の職員は「トップ(市長)の指示だった」と話している。  署名は「長崎原爆中心牌』問題を考える市民連絡会」(代表世話人、岩松繁俊・長崎大名誉教授ら4 人)が9月から取り組み、11月29日、全国10万9333人分を市に提出した。  市関係者によると、市内の2万4406人分の氏名と住所を二十数台のパソコンに人力、同じ人が2 回以上署名していないか▽世帯別にまとめると何軒か▽市内の人口と世帯数に対する署名者の割合−な どを分析。結果は書類にまとめたが「磁気ディスクは消した」という。  市は「電子計算組織の運営に係わる個人情報保護条例」で「個人の思想、信条、宗教、犯罪その他の 基本的人権を侵す恐れのある事項を電子計算組織に記録してはならない」と規定している。このため作 業前に職員から「条例に抵触する恐れがある」と異論が出たが、担当幹部の指示で実行されたという。  結果は、13日の市議会建設水道委員会で報告され、市側は「署名者のうち市外が78.1%。市内 分も2回以上署名した重複記載が643人」などと説明。請願は不採択になった。  市の計画では来年8月9日の長崎原爆忌までに現在の中心碑を撤去し、代わりに母子像を設置する。 しかし、被爆者団体などが撤去に反対している。伊藤市長は「電算化は指示していないが行政として分 析は当たり前。分析したから(署名者の中に)市民が少ないことが分かったと話している。  しかし、電算処理の個人情報保護法を所管する総務庁は「省庁も多くの署名請願を受けるが、署名簿 の電算分析など聞いたことがない」と話し、市民連絡会の岩松代表は「計画を遂行するため署名を過小 評価する目的でやったとしか思えない」と反発している。  石村善治・福岡大法学部教授(行政学)の話 署名をどう扱おうが市の勝手ということにならない。 例えば政治団体が集めた署名簿を収集・分析すれば、行政が住民の政治意識を管理することになりかね ず、憲法が保障する思想信条の自由の侵害だ。特に個人の検索が容易で、外部流出の恐れがある電算デ ータ化は問題。

96/12/20(毎日) 長崎市の反対署名電算入力 「まずい」に「上の判断だ」・幹部、現場の疑問はねつける

 「こんなことをしていいのかと、正直、戸惑いました」19日明らかになった長崎市役所の署名簿コ ンピューター入力。市の計画に反対する人たちの住所、氏名を電算処理することには、携わった職員の 中にも疑問の声があった。  原爆落下中心碑の撤去反対署名が提出された11月29日。担当の公園緑地課は深夜まで明かりが消 えなかった。長机に積まれた署名簿を10人ほどの職員が囲み、住所、氏名を読み上げて分類。電算入 力、分析は土日の休日返上で続けられ、3日間かかって別館の情報システム課のパソコンで行われた。  しかし、職員は最初から電算処理を納得したわけではなかった。市は「電子計算組織の運営に係わる 個人情報の保護に関する条例」で「個人の思想、信条、宗教、犯罪その他の基本的人権を侵す恐れのあ る事項を電子計算組織に記録してはならない」と規定。ある課では複数の職員から「これは(条例違反 の恐れがあり)まずいのではないか」との声が上がり、管理職が幹部にその声を伝えた。が、返ってき た答えは「上の判断だ」。  電算処理の個人情報保護法を所管する総務庁はこの件について「個人情報の処理は、それが行政の事 務遂行上必要な場合だけ許される。必要性の判断は自治体の裁量にゆだねられ、また、どのような情報 を人力してはならないかは、自治体の条例で規定される」とコメント。  ただ「省庁も多くの署名請願を受けるが、請願の内容は検討しても、署名簿の電算分析など聞いたこ とがない」という。また「データの議会提出は数字にとどめるべきで、市側が署名内容について(筆跡 が似たものが多いなど)立ち入った見解を示すことは、地方公務員法の守秘義務の観点から疑問が残る 」という。  一方、市は「香港上海銀行の保存を求めた条例請求の時も署名簿の点検をした」と、分析の正当性を 主張している。しかし自治省は「直接請求は、地方自治法で有権者名簿との照合や縦覧が義務づけられ ているが、任意の署名にそのような規定はない」と話している。  ある署名者(33)は「署名のことは夫にも言っていない。数字だけが行政に伝わるものと思ってい たが、市が住所や世帯別に分類・分析していたとは……。データは消去したと言われても信じられない 」と話した。 

96/12/21(長崎) 中心碑撤去の反対署名 市が名簿を電算処理 条例抵触との指摘も

 長崎市が、約11万人の原爆落下中心碑撤去・建て替え計画の反対署名のうち、同市内分の住所と名 前を、重複数や世帯数などを分析するためコンピューターに入力していたことが20日、分かった。  思想や宗教などに関する個人情報の電算登録は同市の条例で禁止されでおり、署名実施団体は「プラ イバシーの侵害」と反発、市は「条例には抵触しない」としている。  長崎市によると、先月29日から三日間、署名(提出者調べで10万9333人分)のうち、市民2 万4406人分の住所と名前を小型パソコン約20台に入力。住民記録などを扱う電子計算システムの 大型コンピューターで集計、分析した。残りの県外居住者らは手作業で行ったという。  市は電子計算組織の」運営にかかわる個人情報の保護に関する条例で「個人の思想、信条、宗教、犯 罪、その他の市民の基本的人権を侵すおそれのある事項を電子計算組織に記録してはならない」と規定 。しかし、市は「市内部に条例に抵触するのではとの意見もあったが、正確な人数を把握するため集計 は必要だった。入カ項目は住所、名削だけで、登録したデータは既に消した」として条例に抵触しない との見解を示している。  署名簿を提出した長崎「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会の坂本浩事務局長は「市の今回の行為 自体が、異常」と反発。情報公開公開条例に詳しい原章夫弁護士は「市のやり方は疑問だ。条例は個人 情報が流出、悪用される可能性自体を包括的に防ぐためのもので、登録データの抹消で済まされる問題 ではない」と指摘している。  市は署名の重複数、市内世帯数など詳しく調べ、同計画の見直しを求める請願を審査した13日の市 議会建設水道委員会で公表していた。

96/12/21(長崎) 反対運動の継続を確認・市民連絡会

 長崎市の原爆落下中心碑撤去・建て替え計画に反対する長崎「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会 は20日、同市桜町の県勤労福祉会館で拡大事務局会議を開き、今後の活動方針を決めた。     同市は19日から中心碑のある爆心地公園(松山町)の整備工事を開始。同連絡は、あくまで計画の 白紙撤回を求め、反対運動を続けていくことを確認。当面の具体的活動として@署名運動の継続Aビラ 配りB抗議集会―など。また、同連絡会が提出した約11万人分の署名を、同市がパソコン入力し分析 していたことに対し、抗議の申し入れをするほか、工事差し止めを求める法的手段も検討する。

96/12/21(毎日) 「中心碑」反対署名簿電算化 「人権侵害」「許せない」・・・市の姿勢に批判相次ぐ

 長崎市が、原爆落下中心碑の撤去・建て替え反対署名簿を電算化した事実が明るみになった20日、 署名団体などから市の姿勢を批判する声が相次いだ。  反対署名を提出した「長崎『原爆中心碑』問題を考える市民連絡会」(代表世話人、岩松繁俊・県原 水禁顧問ら4人)は、市内で会合。メンバーからは「明らかにプライバシーの侵害で、空いた口がふさ がらない」「市長の責任も追及したい」などの意見が続いた。  メンバーの一人、全国被爆二世教職員の会の平野伸人会長は「署名の重みを受け止めず、あら探レす るために個人のプライバシーを電算入力するのは許せない。民主主義の根幹を揺るがす行為。これでは 署名するのが怖いという人も出てきて、市民運動に影響が出かねない」と話した。  中心碑撤去反対で住民監査請求をしている崎山昇さんは「役所に人権意識が欠如している証拠。我々 と話し合いを持とうとしない市長の考え方を端的に表している」と話した。  一方、8年前に直接請求で旧香港上海銀行長崎支店の保存を求めた長崎市の阿野史子さんは「市の方 針にそぐわない思想、信条、行動などを排除しようとする姿勢は時代錯誤で、ファッショ。今のうちに 改めなければ、とんでもないことになる。平和都市ナガサキのイメージダウンで、大変恥ずかしい」。  全国市民オンプズマン連絡会議の県内代表人、原章夫弁護士は「思想・信条などに絡む署名は悪用さ れる可能性があるため、条例でわざわざ電算化を禁じている。磁気ディスクは消した』というが、消せ ば良かつたということにはならない」と指摘した。

96/12/21(毎日) コラム「96片々・長崎への手紙」 「中心碑問題」賛成意見は多いの?

 今年4月、新しくなった長崎原爆資料館で取材中、語り部語り部活動を続ける被爆者に呼び止められ た。  「あれは、いかんわ」  長崎市の原爆落下中心碑の撤去・建て替え計画のことだった。  「女神像かなんか知らんけど、中心婢はなくなるんでしょ、それはダメだ」  計画の詳細を長崎市は広く市民に知らせていなかったころで、意見は被爆者の直感的な反応だと思っ た。市の対応は、原爆で傷つき、肉親を亡くした人々の心の琴線にふれる問題を、十分な説明もないま ま、手続き論だけで計画を推進しているとしか思えない。  原爆資料館の展示変更問題で「秘密主義」とあれだけ批判を受けた。それなの製作者との契約内容に ついてのマスコミ取材には「情報公開条例で請求してくれ」。計画に反対する市民らが伊藤一長市長に 何回も説明を求めたのに対しても市長が顔を出じたのは5月の1回きり。約11万人の署名簿を提出し たとき、市民団体側は「いつでもいいから市長自身に受け取ってほしい」と要望したのに、応対は助役 だった。メンバーは私たちをバカにしている」と、はき捨てた。  中心碑には世界各地から毎年、数えきれない人々が訪れ、頭を垂れてきた。取材で出会うさまざまの 人たちからは計画反対の意見こそ出るが、賛成の声は聞いたことがない。  「反対意見が市内で少ない」と署名を突っぱねる伊藤市長なら、ぜひ市民の賛成意見の数も調べたう えで納得させて欲しい。

96/12/21(毎日)コラム 市幹部は「裁量内」と言うが・・・ 信頼を裏切る行為憲法違反の疑いも

 長崎市による署名簿電算入力が明らかになった20日、市幹部の中には「署名簿は市に出された。内 容をパソコンに入れ、分析するのは市の裁量の範囲だ」と主張する人もいた。が一方で市当局には人権 や個人情報の保護意幟が欠落していると心配する市民も少なくない。  電算処理の事実を確認した時点、学者らに意意見を求めた。一致して返ってきたのは「条例以前に憲 法違反の疑いがある」。中心碑問題をどう考えるかは、個人の思想、信条にかかわる問題。その住所、 氏名を市が分類・分析することは、思想信条の自由を保障した憲法に触れるという考えだ。  福岡大法学部の石村善治教授(行政法)は「個人情報の自己決定権の原則に抵触する」という。自己 決定権とは、情報を第三者の手にゆだねても、その利用方法は当人が決められるという権利。悪用に対 する歯止めだ。  「住民はこれが守られるという前提で、行政に(住民基本台帳など)一定の個人情報をゆだねている 。電算処理であれ手作業であれ、署名をした人たちは自分の住所や氏名がデータ入力されることなど、 想像も了解もしていない。市は法以前に、住民信頼を裏切った」と話す。    ◇  ◇  署名を例に取り、どんな恐れがあるのか具体的に検証してみる。  【ケース1】署名者の中に市職員がいたとする。市は全名簿を点検、分類しており、その気になれば 、職員を探すことはたやすい。「あいつは市の計画に反対した」というレッテル張りや処遇差別につな がりかねない。  【ケース2】ある主婦が夫は職場で妻は家で署名をし、政治問題などで互いに知られたくないとする 。ところが、今回のように市が世帯別に著名簿を分類すれば、夫婦が互いに知らないことを、市だけが 知りうることになる。    ◇  ◇  検索や伝達が容易な電算データ化はさらに問題。  【ケース3】市は今回、電算処理で数千枚の署名簿を五十音別や住所別に分類、磁気ディスクにまと めた。「すべて消去した」というが、密室での処理。一度電算化されたデータは分析が簡単で、例えば 町内会別の反対者数を出し、多い地域で市が都市計画の説明会を重点的に開くなど対策も取れ、市長選 の対策デー夕にも使える。万が一インターネットなどで外部流出すれば、回収不能だ。  【ケース4】特定の政冶団体が集めた署名簿を、毎回電算入力したとする。すべてに重複する人を検 索すれば、精度の高い支持者名簿になる。  石村教授は住民が『怖くてもう署名なんかできない』とおびえてしまうのが一番怖い」と話している 。

96/12/22(長崎) 中心碑問題・反対署名に知人の名 長崎市長が真意聞く・「請願権侵す」と指摘も

 伊藤長崎市長が、市に提出された原爆落下中心碑撤去・建て替え計画に反対する約11万人分の署名 簿の中にあった知人名を見つけ、署名に対する考えを聞いていたことが21日分かった。市長の言動に ついて「請願権を定めた憲法の精神に反する」との指摘が出ている。  市長は、署名簿の中にあった「知った人」に見解を聞いたと言い、「そう難しく考えずに署名に応じ た、話していた」と語つた。  これに対し、一橋大法学部の堀部政男教授(情報法)は「市長は知人に『一体どういうことなの』と 気軽に聞いたと思うが、聞かれた側は自由な意見を言いにくくなり、萎縮効果をもたらす結果にもなり かねない。そういう意味で、憲法16条(請願権)の精神に反することになり得る。市長は特別職であ り、守秘義務を定めた地方公務員法34条は適用されないが、職務の性格から秘密を漏らしていいとは 言えず、一定の制約を受けるのが通常の解釈。道義上、倫理上の責任が問われる」と指摘する。  憲法16条では「何人も平穏に請願する権利を有し、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない 」と規定している。  署名を提出した長崎「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会の内田伯代表世話人(67)は「署名は 市民らが任意で応じている。署名がチェックされるとなると、大変なことだ。新たな批判の渦が起こる だろう」と不信感を募らせている。  今回の署名の問題では、市が署名の一部を電算処理し、重複数や世帯数まで詳細に調べ市議会で公表 した。署名の有効性を疑問視する幹部発言もあり、同連絡会などは市の姿勢を厳しく非難。各種団体に も抗議の動きが出ている。

96/12/22(毎日) 原爆中心碑撤去問題・署名簿見た長崎市長 「なぜ反対した」と電話

 長崎市の伊藤一長市長が市の原爆落下中心碑撤去計画に反対する署名簿を見て、うち数人に「なぜ署 名したのか」などと電話をしていたことが、21日までに分かった。地方公務員法の守秘義務違反の可 能性が高く、署名団体は「署名簿の目的外利用だ」と批判している。同市は署名簿を電算入力、分析し たことも明らかになっている。

守秘義務違反の可能性

 毎日新聞の取材に市長は「署名簿に私の後援会員数人の名前があったので『なぜ署名したのか』と、 理由を尋ねた。私が直接電話したので、彼らは驚きながら 『知り合いに頼まれて、よく分からないう ちに署名してしまった』などと答えた。(署名は)その程度の認識ですよ」と語った。  さらに市長は「署名を全部見たが、同じ筆跡が多かった。市内の意見を二分するまでには至っていな い」と語り、「署名は重く受け止めるが、現計画が極端に市民を無視しているとは思えない」と話した 。  地方公務員法で市長は特別職公務員で、「職務上知りえた秘密を漏らしてはならない」 (34条) との規制を受け、個人情報保護法を所管する総務庁は「署名簿をもとに電話をするのは、市長として得 た情報の目的外利用の可能性があるため、守秘義務違反の恐れがある」と指摘する。  反対署名は、長崎「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会(代表世話人、岩松繁俊・県原水禁顧問ら 4人)が先月未、全国10万9333人分を提出した。市はうち市内在住者の署名約2万4000人分 をコンピューターに入力し、住所や世帯別に分類、点検したことが明らかになっている。  市民連絡会の代表世話人の一人、竹下芙美さんは「署名簿の電算化だけでもプライバシー侵害で恐ろ しいことなのに、署名者に直接電話までするなんて。反対運動に対する明らかな脅しです」と話してい る。  大隈義和・九大法学部教授(憲法)の話 こうした行為は、請願権の根本にかかわるもので、市長の 憲法感覚を疑う。事実とすれば目的外使用の点も含め、地方公務員法の守秘義務に反するのではないか 。長崎市は今後、個人情報保護条例を充実し、その精神の徹底を図るべきだ。

96/12/22(長崎) 「電算処理は人権を侵害」・被災協が市長に抗議文

 長崎原爆被災者協議会(山口仙二会長)は21日、長崎市が原爆落下中心碑撤去・建て替え計画の反 対署名の一部を、電算処理していたことに対し、伊藤長崎市長に陳謝を求める抗議文を郵送した。  抗議文は「署名簿のコンピューター処理は、思想調査であり、基本的人権の侵害。市民の人格をじゅ うんしてはばからないその姿勢こそ、市民の声に耳を貸さない態度を生み出す源」と指摘。@市長責任 の明確化A中心碑撤去工事即時中止B中心碑問題の話し合いの場の設定ーを求めている。

96/12/25(長崎) 長崎市の署名電算処理問題・市長「軽率だった」 条例抵触しない、と見解

 伊藤長崎市長は、原爆落下中心碑撤去・建て替え計画に反対する署名を電算処理していた問題で24 日、「軽率だった」として今後、繰り返さない考えを明らかにした。  共産党市議団が「問題の真相を明らかにし謝罪を」と申し入れたのに答えた。  市長は約11万人分の署名のうち、市民約2万4千人分のデータを電算処理したことについて「軽卒 だった。今後、こういうことのないよう注意したい」と述べた。  しかし「今回は市議会を控え、市内、県内分などの整理が必要だった。数が多く時間の制約もあり、 単純な事務作業として行った。個人資産など他のデータとの照合などは一切していない」として、電算 記録に制限を設けた同市の個人情報保護条例には抵触しないとの見解をあらためて示した。  一方、長崎の原爆展示をただす市民の仝(西淳代表)は、署名の取り扱いについて中野市議会議長と 同市に要望。同会は今月六日、長崎原爆資料館の展示改善を求め市議会に請願を提出した際、約3万人 分の署名を添えており、「署名者から不安の声が届いている。電算入力しないように」などと求めた。 議長は「一切していないし、今後もしない」などと答えた。

1997/1/18(長崎) 情報保護審に報告  署名電算処理で長崎市 中心碑問題

 長崎市が原爆落下中心碑撤去・建て替え計画に反対する署名を電算処理していた問題で、同市は17 日、市個人情報保護審議会(会長・園田格長崎大名誉教授)にこれまでの経過を報告。市は「電算処理 は集計業務だけで法的にも問題はない」と従来の見解を繰り返した。  市企画部は署名簿を電算処理した目的を説明。峰繁紀部長は「著名簿の電算処理は市内在住者の総数 や世帯数、重複数を把握するための集計作業。入カデータ一は既に消去した、憲法や条例の精神を侵し てないし住民基本台帳とは絶対に照合していない」と強調した。  委員らは「市民の間で不安や不信が広がっていること自体が問題」「条例に抵触する恐れのある行為 は行政がすべきではない」などと指摘。「電算処理の取り扱いを自治省など関係省庁に問い合わせるべ き」との要望も出された。  園田会長は今後の審議会開催について「中心碑撤去・建て替え計画をめぐり反対運動が続いており、 市の電算処理問題は機会があれば審議したい」と話している。

1997/1/13(長崎) 「母子像のそばなら筋違い」 旧天主堂遺壁移設を 浦上教会   長崎市に近く要望

 長崎市の爆心地公園(松山町)の整備工事に伴い、原爆落下中心碑を撤去し新しい母子像を設置する 問題で、浦上カトリック教会(本尾町)は12日までに、中心碑のそばに立っている同教会旧浦上天主 堂の被爆遺壁を移設するよう、同市に要望していくことを明らかにした。  同教会では中心碑撤去・建て替え計画に対し「遺壁は原爆の実相を物語る本物の被爆遺構であり、人 の手によってつくられる母子像の付属品のようにされるのは筋違い」などと、信徒たちから反対の声が 上がっているという。  川添猛主任神父(64)は「本来、遺構は被爆した場所にあるのが理想」とした上で「現在、市が所 有しているが、教会の遺壁については発言する権利があり、別の場所に移してほしい」と強く訴えてい る。3月早々にも要望する方針。これに対し市側は「今の場所に残す計画で、移設は考えていない」と している。  旧天主堂(爆心地から約0.5キロ)は大正14年に建設。原爆による爆風などでほぼ全壊したが昭 和34年、信徒らが現在の新しい天主堂を建て直した。33年、新天王堂新築に伴う旧天主堂撤去の際 には、残った被爆遺構の保存問題をめぐり激しい論議が交わされた。最終的には浅がいの一部、高さ11 メートルの南側遺壁だけを同公園に残し、市が所有することに決まった。

1997/1/21(長崎) 原爆落下中心碑撤去・建て替え・反対グループ代表と初会談 市長、次回新提案か   工事一時見合わせ確認

 混乱が続く長崎市の原爆落下中心碑撤去・建て替え問題で、伊藤市長と計画に反対する長崎「原爆中 心碑」問題を考える市民連絡会の代表が20日、同市役所で初めて会談。24日に再度、話し合い「着 地点を見いだしたい」(市長)との考えで一致した。  【社会面に関連記事】  会談は市側から市長ら3人、同会側から代表世話人の岩松繁俊さんら9人が出席。非公開で約一時間 にわたり行われた。  会談後、両者の説明によると、@話し会いを継続するA次回以降に着地点を探るB話し合い期間中は 中心碑の移設工事はしないーことを相互とも確認した。  「着地点」について、市長は「お互いの立場を理解しながら、どうすれば最大公約数的な解決ができ るか努力したい」と述べ、同会側は「中心碑についての提案があると思う」と話している。  また、同会は「次回の結果をみないと何とも言えないが、すべて市長次第。われわれは譲る考えはな い」として、反対運動は継続する。

1997/1/24(長崎) 中心碑問題 市長は否定していたはずだが・・・ 反対意見届いていた 長崎市政モニター 担当部が報告怠る

 長崎市の原爆落下中心碑撤去・建て替え問題で「反対の声は行政には届いていない」としていた同市 に、市政モニターから、反対意見の”直訴状”が多数寄せられていたにもかかわらず、担当部が伊藤市 長に全く報告していなかったことが23日、分かった。  モニターは同市が委嘱(101人)。委嘱後の昨年9月から今月までに届いた「モニター通信」は計 89件。道路、ごみ、福祉などについてそれぞれの考えを記しているが、中心碑問題が19件で最も多 かった。  ほとんどが同市の姿勢に批判的な意見で、「中心碑には被爆者らの言い尽くせない気持ちが込められ ている」「母子像はデザイン的にも中心地にふさわしくない」などと指摘。「市長がまず話し台いの場 を設けるべきだ」「なぜ今の中心碑がいけないのか、という理由を市長に聞きたい」も目立った。ある 男性は「市の強硬な態度が目に余る。市長が反対市民の陳情などに出席しないことが遺憾」と、数回に わたり自らの怒りをぶちまけていた。  モニター通信は市企画部総台企画室が受け取り、所轄部局の回答を本人へ送る仕組み。同部の峰繁紀 部長は「誠に申し訳ない。同問題で多数の通信がきていることを知らなかった。担当者の業務多忙が理 由だが、職務怠慢と言われても仕方ない」と話している。  中心碑問題で、市議会や反対団体の陳情などに対し「わたしには反対の声は届いていない」と再三述 べてきた伊藤市長は「担当部長から事実経過を聞いたが、非常に遺憾だ。職務怠慢以外の何ものでもな い。モニターの方々のご意見は批判を含め真しに受け止めたい」と釈明している。  

きょう各派代表者会議 議会、中心碑収拾へ動き

 伊藤長崎市長と長崎「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会代表による会談が始まった原爆落下中心 碑撤去・建て替え問題で、同市議会の正副議長らが23日までに、再び事態収拾に向け動き出した。2 4日は各派代表者会議を開き対策を検討する。  同問題で、正副議長と4会派代表(共産、一人会派を除く)は昨年12月、伊藤市長に対し「計画は 従采通り推進。ただ歴代中心碑は爆心地公園内で活用を」と提案。市はこれを受け計画を一部変更した が、その後も反対運動は強まった。このため、再び市議会内に「これ以上平行線を続けるのはいかがか 」との声が上がった。  24日は市長と同市民連絡会の2回目の会談が設定されており、市議会側は各派代表者会議で検討し た上で、両者に何らかの提案をする可能性もある。

1997/1/25(長崎) 三角柱、母子像とも別の場所に 「第3の中心碑」案提示 市議会議長が私案  反対派「検討」市長は同意へ

 長崎市の原爆落下中心碑撤去・建て替え問題で、中野市議会議長は24日、対立を続ける同市と長崎 「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会に対し、三角柱、母子像とも爆心地公園内の中心地点以外に建 て、同地点に設置するものは、新たな協議会で合意形成するという「第3の中心碑」案を提示した。伊 藤市長は同意する意向。同会側は持ち帰って検討するとし、同問題は今後、同会の動きが焦点となる。  中野議長は各派代置者会議に諮った上で「これ以上、社会的混乱を拡大させることを看過できない。 事態収拾を図ってほしい」として、両者同席の場で私案を提示した。  私案では「第3の中心碑」について無宗教的なものとし、協議会は「中立的な委員によって構成」、 協議会答申後は議会の同意を経て着工し、その間は原爆死没者名簿(マイクロフィルム)奉安箱を中心 地に設置する、としている。  議長私案について、市長は「重みがある」として受け入れる方向で内部協議するとみられる。しかし 、同会側は私案を評価する声もあるが「三角柱の現地存続があくまで前提」との考えも根強く後日、対 応を決めることにした。  同議長は今月中の回答を双方に求めた。

事態収拾に期待 反対派の動きが焦点に

 中心碑問題で24日「第3の中心碑」という解決案が出てきた。この日、2回目の会談をした長崎市 と長崎「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会だが、市議会側は「合意は困難」と判断。議長私案の形 で事態収拾に期待をつないだ。  午後1時47分。市役所3階の応接室で伊藤市長と同会の会談が始まった。同会側は「三角柱を現在 地に残すことが前提。円卓会議を開き解決案を市に諮問するように」と提案。だが、市長は「議会もあ り、独断では判断できない」として合意に至らなかった。  これに先立ち同1時から聞かれた市議会各派代表者会議。この時点で既に議長私案はほぼ完成。会談 と代表者会議が同時並行的に開かれたこともあり、市長は「三角柱移設を理解してもらえれば、みなさ んの気持ちをくんだ形で・・・」というのがやっとだった。  私案は「第3の中心碑」を市民合意の上で模索する内容で、双方に対し根本的な主張の撤回を求めた ”和解案”。市長は午後6時からの記者会見で「重みがある」と受け入れる意向を示したが、同会は結 論を保留した。  三角柱存続が大前提の同会には「市議会にあっせん依頼をしたわけではない」と、私案そのものを否 定する声もある。同会は今後、内部協議でさまざまな意見をぶつけながら最終判断を迫られるが、市議 会内で中心的に動いた議員は「市政の混乱をこれ以上長引かせてはいけない。議長私案をよく考えてほ しい」と話している。

1997/1/30(長崎) 「中心碑撤去理由説明が先決」 議長私案”棚上げ” 被災協、見解まとめる

 長崎「原爆中心碑」問題を考える市民連絡会に参加している長崎原爆被災者協議仝(山口仙二会長) は29日、同市岡町の同被災協で拡大理事会を開き、中野市議会議長が中心碑問題の事態収拾のため提 示した私案について対応を協議、、私案を検討する前に、現中心碑をなぜ撤去するのか不明確として伊 藤市長、同議長に対し説明を求めることが先決、との見解をまとめた。  被爆者団体として私案にどう対応するか注目され、理事の中から「市と連絡会の主張を足して二で割 るような提案は受け入れられない」との意県もあったが、「なぜ今の中心碑を取り除かねばならないの かとの疑問の声が大勢を占めた。  議長私案は「三角柱、新モニュメントとも爆心地公園内の中心地点以外に設置。中心地に設置するも のは新たな協議会で合意形成する」としているが、山口会長は「市長もそうだが、議長も私案の中で撤 去する理由を説明していない」と指摘している。  被災協は、同連絡会が議長私案に対する意思決定を図るため来月5日開く総会で、この日の協議結果 を報告する。

to forum BACK NEXT